EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
それが変わるきっかけだった。
「それからは、もう必死に学んだよ。色々なことを。あの頃は字が書けなくて、文章もろくに読めなかったから、取り敢えずそこから勉強を始めてね。あの頃はそんな俺が教師になるなんて夢にも思わなかったな」
「そうですか?静理さんは先生が似合ってると思います。お話、とってもわかりやすいです」
「ありがとう。君に褒められると……嬉しいね」
照れながら静理は幸せそうに微笑んだ。
それから自分の顔の緩み具合にハッとして、そっぽを向きつつコホンとわざとらしい咳払いを一つ。
「相応しい立ち居振る舞いとやらは、白魔を観察して盗んだよ。悔しいことに、だらけていなければ白魔は頭から足の先までほぼ完璧だからね。これ以上ない最高の手本だった。言葉遣いも……実は白魔のことを真似したんだ。さすがに自分を僕と呼ぶのは寒気がしたからやめてしまったけれど」
「言われてみれば、白魔さんと静理さんは喋り方が似てますね」
「ふふ、昔の俺はカロンよりも言葉遣いが悪くてオーレリアンよりも沢山暴言を吐いていたのにね。変わる努力をしている間、本当に自分でも何やってるんだって思ったことは一度や二度じゃない。こんなことに、意味はあるのかと……この屋敷を出て行こうかと思った日もあった。けれど途中で逃げ出して白魔に負け犬だと嘲笑われるのは不愉快だから……結局今も、ここにいる」