EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
静理は改めて振り返った過去を思い、安堵のような吐息をこぼす。
「逃げ出さなくて、本当に良かったと思っているよ。こうして、君と出会うことができたんだから」
後悔はない。
だが、静理には一つ不安なことがあった。
(今の話を聞いて、小鳥ちゃんはどう思っただろう……?)
嫌われることが、怖い。
彼女はそんな薄情ではないとわかっていても、静理は不安だった。
「小鳥ちゃん。今の俺は、俺が自分の理想の形を努力で作り上げたものだ。だからといって、偽りということじゃなくて……この俺も、間違いなく俺だから……どうか、騙されたとか……思わないで欲しい」
嫌わないで欲しい。
その弱々しい言葉が静理の口からこぼれるより先に、小鳥が素直な気持ちを喋り出す。
「騙す……?そんなこと思いません。静理さんは静理さんです。過去にどんなことがあっても、今目の前にいる静理さんが私にとっての大好きな静理さんです。だから、その……」
静理の心の怯えを感じ取ったのか、小鳥は祈るように囁いた。
「怖がらないで、下さい……」
過去の傷も、醜い心の内側も、何もかも全てを曝け出されたとしても。
「私は、静理さんが好きです」
「っ……」
柔らかく包み込まれるようなその愛に、静理は泣きたくなった。
「ありが、とう……。俺も、君が好きだ」
何度感謝を口にしても足りない。
そしてこの日、静理の中で「好き」という愛の言葉が特別なものになった。