EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】


†††


 それからすぐジェラルドがフランスに戻り、静理は心安らかな日々を送っていた。


(やっぱり、ジェラルドがいない方が落ち着くな)


静理は父親のことを「ジェラルド」と呼ぶ。

決して父とは呼ばない。

この世に生を受けてこの方、ろくな目にあっていない彼にとって、自分を生み出した親というものは憎むべき対象でしかなかった。


(なんのために俺は生まれてきたのだろうか…)


娼婦の母。

一夜の慰めに彼女を買ったジェラルド。


(俺は……生きてる意味があるのか?)


自室で授業に使うレジュメを作成していた静理は憂鬱げに髪をかき上げた。

どうやら集中力が切れたらしい。

ブラッディーセラーにでも行って喉を潤そうか。

そう考えて彼が部屋を出た時だった。


「ねえ、僕のプリマドンナ。今日は僕と一緒にデートの日でしょ?」

「はあ?なーに言ってんの?小動物の今日の予定は俺で一日埋まってるんだけど」

「えと、あの……お二人とも、初耳なんですけど」


廊下で三人の声がした。

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