EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
闇が淀んで腐っていくような場所。
それが小鳥にとっての「闇市場」の第一印象だ。
車を走らせること三十分。
やがて見えてきたゲートをくぐり抜け、自動車がスピードを落とし始める。
この区域は有刺鉄線で囲まれており、「DarkMarket」と書かれた木の看板が掲げられている門からでないと立ち入れないようになっているらしい。
その有刺鉄線の中で、闇が淀む。
普通の人間の感覚ならば嫌悪感を持つであろう禍々しさだ。
周囲の建物や道路は不衛生な汚れが目立ち、細い路地へ入れば悪臭にやられ鼻が曲がる。
「……ここが…闇市場…?」
小鳥の独り言を聞いた静理が隣で深い溜息をついた。
「生き地獄が始まる場所だよ。一度ここに放り込まれたら…簡単には抜け出せない」
大通りを道なりに進む。
少しして静理はある屋敷の前で車を停めた。
「……この地区は、俺が生まれ育った場所なんだ」
「えっ?」
ボソリと呟かれた小さな彼の声に反応するも、当の静理は扉を開けてさっさと車から降りてしまった。