EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
(静理さんの生まれ育った場所、って……ここが!?こんなヒドイ環境で静理さんは暮らしてたの!?)
空気の悪そうな外を見つめながらふと思い出したのは、以前静理が淡々と語ってくれた言葉だ。
ーー俺の母は娼婦だった。一夜の客だったジェラルドと交わって俺が生まれて…。小さい頃は母親のいる娼館にいたんだけど、金がないからって理由で奴に売られたんだ
ということは、この地区のどこかに母親がいた娼館があるのだろう。
(……もしかしてここは、静理さんにとって大嫌いな場所なのかもしれない…)
何だか静理が心配になってきた小鳥は慌てて車から降りた。
「静理さんっ」
荷台から商品を運び出していた彼に駆け寄る。
「ん?どうしたんだい?顔色が悪いけれど…」
顔色が悪いのは静理の方だ。
いくら表情を繕っても、それは小鳥を騙せる程上手くない。
「静理さん、あの…」
「おいで。こっちだよ」
小鳥の声を遮り静理が歩き出す。
眼前にドッシリと建っている西洋風の大きな屋敷が今日の客の家らしい。
庭がなく、すぐに玄関前まで辿り着いた二人はインターホンを押して家の主人が中から出て来るのを待った。