EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
それから、また二人は車に乗り込んだ。
直ぐ様エンジンをかけて走り出すのかと思いきや、静理はシートに座って少しの間だけ脱力していた。
なかなか車を走らせない静理に、小鳥はハラハラした。
「あの、静理さん…。さっき、用事があるからすぐ移動しないといけないって言ってましたけど………大丈夫なんですか?」
「ああ……うん。大丈夫だよ。あれは嘘だからね」
「嘘!?」
なら良かった。
驚きはしたものの、小鳥はホッと胸を撫で下ろす。
「ですが、どうしてそんな嘘を…?」
「あの場から早く逃げたくてね。彼が君に目をつけてしまったようだから」
言われて小鳥は理王のあの目を思い出した。
こちらを値踏みするような、身の危険を感じる眼差し。
(あの目は、怖かった…)
恐怖と同時に、抱き締めて牽制してくれた静理のことも思い出し、小鳥はほんのり頬を赤らめる。
「君を一人で車に残すのは心配だったから一緒に来てもらったけれど……あの男の前に君を連れて行ったのは失敗だったかな…」
今さら愚痴を並べたところで仕方がない。
静理は軽い溜息を吐いてからエンジンをかけた。