EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
静理と一緒なら、きっと大丈夫だろう。
(待たせちゃ悪いから、急いで拭かないと…!)
静理にも牙があるのだということを小鳥はすっかり失念していた。
だが忘れていたとしても、結果的に小鳥の身にはなんの危険もなかった。
「お待たせしました!」
タオル一枚で廊下へと出る小鳥。
静理はそんな彼女に近づくと、少しだけ身を屈めて小鳥の香りを嗅いだ。
「………うん。大丈夫そうだね」
それだけだった。
静理は小鳥から離れ、廊下をスタスタと歩き出す。
小鳥は慌ててくっついていった。
静理の背中を見ながら廊下を進む。
すると突然、静理が歩きながらポツリポツリと話し出した。
「俺の母親が……いつもキツイ香水をつけていたんだ」
振り向かずに彼は語る。
「あの香りが、俺の鼻にも染みついてしまってね。……苦手なんだ。違うとわかっていても、あの女を思い出す」
急に静理が立ち止まった。
そして小鳥を振り返る。
「君は、香水なんかつけない方が……いい香りだよ」
ちょっぴり照れた様子で微笑む静理。
いい香りだと褒められた上に、彼の珍しい表情も見られるだなんて驚きだ。
小鳥は固まったまま数秒、静理に見惚れていた。
しかし、またすぐ歩き始めた静理にハッと我に返り、後を追いかけたのだった。