EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】
ちょっと考えてから小鳥は連想ゲームでもするように言った。
「吸血鬼と言ったら……ドラキュラ?」
「うん。人間の世界では有名らしいね、吸血鬼ドラキュラ。よし、そこから話していこうか」
静理は教師モードで語り始める。
「ドラキュラはブラム・ストーカーが書いた小説の中で、夜な夜な女性の生き血を啜る吸血鬼として登場する。小説を読んだことがなくても、キャラクターは有名だからイメージはできるよね」
よく有りがちな吸血鬼像はこれだ。
小鳥はコクンと頷く。
「そんなドラキュラにはモデルがいてね。中世ヨーロッパに実在した人物、ヴラド三世がそう。彼のことを調べてブラム・ストーカーは小説を書いたんだ」
「モデル…?もしかして、そのモデルになった人が吸血鬼だったんですか?」
「違うよ。実在したヴラド三世と吸血鬼はなんら関係ない。彼が吸血鬼だという記録はないし、闇人側も彼を同胞だとは認めていない。ヴラド三世は人間として生き、人間として死んだんだ。死後も黄泉帰りにはなっていないよ」
「ならどうして、吸血鬼のモデルに…?」
尋ねると静理は悲しげに微笑した。
「人間側から誤解されて吸血鬼に仕立て上げられている人間は多くいるんだ。有名どころではジル・ド・レやバートリー伯爵夫人がそうだよ」
知らない名前の連続に、小鳥が首を傾げる。