EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【白魔編】
普段の氷河なら道がわからなくなるミスなどしないだろう。
どれだけ頭が正常に働いていないのかわかる説明を聞いて、白魔は呆れた溜息を吐き出した。
「ハァ…。なんか面倒臭いからバイバイ。さ、行こう小鳥」
「え!?置いてっちゃうんですか!?」
「僕達にできることはないからね。彼の宿泊先も知らないし、上官に連絡する手段もない。というか関わりたくないよ」
本音を言ってから車へと向かう白魔。
立ち上がった氷河もフラフラと反対方向に歩き出す。
そんな氷河の背中を心配げに見つめていた小鳥は、白魔に近寄ってクイクイと袖を引っ張った。
「お酒が抜けるまでランランさんのお家で休ませてあげるのは…ダメですか?」
「嗚呼…!僕のプリマドンナは人が良すぎるよ。彼が人間嫌いなのは知ってるでしょ?どうせ余計なお世話だって言われるよ?」
「でも…」
あんな状態でフラフラしている氷河を月那が知ったらどう思うだろうか。
偶然とはいえ発見してしまったのだから助けてあげるべきではないか。
小鳥がグルグル考えていると、白魔がまたもや深い溜息。
「わかったよ…。君の潤んだ瞳には完敗さ。愛してる」
然り気無く愛を囁いてから白魔は氷河に近づいた。
「そういう訳だから、拾ってあげる」
「は?あ、おい…!」
「僕のプリマドンナに土下座して感謝しなよ」
氷河を引っ張って無理矢理車に乗せる。
こうして三人で屋敷へと戻ったのだった。