EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【白魔編】

「紅茶でもご用意致しましょうか」

あまり広くはない部屋の中央に置かれている白いテーブルと椅子に客人を導いてからダンクラートが尋ねる。

小鳥を椅子に座らせ自分も席についた白魔が「お願いします」と答えたその時。


ふわり、ふわり――。


白地に金彩が美しいマイセンのティーセットが宙に浮いてゆっくりとテーブルに近づいてきた。

「ひゃ!?」

「うわっ」

驚く二人を見てダンクラートが上品に微笑む。

「ああ、ありがとうエリザベータ」

ティーセットは静かにテーブルへ到着した。


(もしかして、幽霊の奥さん!?)


運んできてくれたらしい。

「わざわざありがとうございます」

白魔が誰もいない空間に向かって礼を言った。

姿は見えないが、小鳥も倣って感謝を述べる。

するとなんだか周りの空気がほんわかしたような気がした。


(エリザベータさんが微笑んでくれたのかな?)


小鳥の心もほんわかしたところでゆったりティータイム。

気を遣ってダンクラートとエリザベータが退室しようとした時だった。

赤いカーテンをそっと開いてエマがやって来た。

「失礼致します。大旦那様、お客様がいらっしゃいました」

「おや、どちら様かな?」

「クラヴィエ家の方々です。白魔様のご兄弟とうかがいました」

「は?まさか来たの!?あいつらが!?」

目を丸くして白魔がガタンと椅子から立ち上がる。

小鳥も驚きを隠せずに口をあんぐりと開けたのだった。







< 156 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop