EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【白魔編】
『ありがとうございます…小鳥さん』
優しい母親の顔で、彼女は言う。
『これからも…どうか、あの子を……よろしくお願いします』
深々と頭を下げる小百合を見て小鳥は疑問を感じた。
(白魔さんはお母さんに愛されなかったって言ってたけど…)
本当だろうか。
(愛情の反対は無関心って言うもん。本当に白魔さんのことがどうでもいいなら、こんなふうに頭を下げたりしないはず…)
疑問の答えが出かかった時、小百合の身体が空気に溶けたように薄くなった。
ハッキリしていた輪郭がぼやけていく。
『貴女のような女性が傍にいれば、きっと大丈夫でしょう』
頭を上げた彼女の表情はもう全くわからず、その姿は魂へと形を変える。
「あっ、待って下さい!白魔さんと話さないんですか!?」
『今更…です。今更、何も話すことなどありません』
魂と声だけが残り、そして次第にそれらも消えた。
『さようなら…』
小さな別れの言葉を耳にした刹那。
バンッ――!!
「母上!!」
扉を勢いよく開けて居間から白魔が飛び出してきた。
「小鳥、母上は!?」