EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【白魔編】
彼の吐息が迫る。
「優しく愛せるよ」
普段の小鳥なら蕩けるような甘い声に頬を染めるだろうが、今は何の反応も示さない。
人形のように表情を変えず、ただ目の前のフェオドールを見つめ続ける。
「好きだ、小鳥…」
届くことを祈って、再び口づけを。
小鳥はされるがままの状態でゆるゆると思考を働かせていた。
(このままフェオさんを好きになれば、楽になれるの…?)
啄むようなキスは甘い。
心地好い安心をくれる。
(けど……違う)
違う――。
自分の恋情を高ぶらせる口づけをくれるのは、この人ではない。
「ごめ…っ…なさい」
空っぽの瞳に光が戻り、涙がポロリと頬を伝う。
小鳥は白魔を想って泣いた。
涙を拭ってやろうとしたフェオドールだったが、切なげな表情で思い止まる。
「……白魔が好き?」
「好、き……好きっ…」
どうしようもなく彼が好きだから、悲しくて、苦しくて、ツラクテ――。
「なら、君はここにいるべきじゃない。……白魔のもとに行くといい」
優しく微笑して小鳥の背中を押す。
小鳥はグシグシと目を擦ってからフェオドールをちゃんと見つめた。
「フェオさん…ごめんなさい。…ありがとうございます」
選ばれなかったことにズキリと痛む心を悟られないよう、フェオドールは無言で手を伸ばす。
彼はまだ元気が無さそうな小鳥の頬をムニッと摘んだ。
「……柔らかい」
「フェ、フェオさん…?」
思わず心の声を呟いてしまった彼だが、すぐ笑みを浮かべてこう言った。
「行っておいで。きっと大丈夫だから」