EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【ルカ編】
「可愛かった。よく我慢したよね俺。偉いでしょ?褒めて」
「え、偉い、ね……?ルカくん」
「ん。ご褒美にキスちょうだい」
「そ、それは……ちょっと、ハードルが……」
高過ぎる。
寝起きに、しかも自分からだなんて、絶対に跳べないハードルの高さを見た気がする。
このままではルカのペースに呑まれてしまう。
気づいた小鳥は、ひとまずこの部屋から出て、ささっと身支度を済ませてしまおうと考えた。
「ルカくん、私、顔洗ってくるね……!」
「そんな急がなくても。もっとゆっくりしてて大丈夫だよ」
言葉では引き留めようとするルカだが、小鳥との時間に少しは満足したのか、抱き締めて拘束することはしなかった。
それに甘えて、小鳥は手で髪の寝癖を直しながら廊下へのドアを開ける。
小鳥が一人で廊下に出てドアを閉めた、その時。
「……やっと、か」
ボソリと、低い声が聞こえた。
ハッとして前を見れば、廊下の壁に寄り掛かって腕を組み、小鳥のことを睨みつけているヴォルフの姿が。
ギラギラとした眼差しに殺意を感じ、小鳥は怯んで動けなくなった。
(ど、どうして、ヴォルフさんが、ここに……?)
たまたま通り掛かっただけだろうか。
それならタイミングが最悪だ。
小鳥がそう思った時、ヴォルフがハッキリした声で話し掛けてきた。