EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【ルカ編】
助けたから懐かれた。
そんな単純な話ではない気がして小鳥は口をつぐむ。
(それに、私があの時ルカくんを止めたのは、ヴォルフさんのためじゃないし……ルカくんのためでも……ない)
一番は、自分のためだった。
誰かを殴るルカを見たくない、というのも本心だが、それ以上に、自分が父親から受けた恐怖を思い出してしまうから。
ヴォルフ程酷く殴られたことはなかったが、ボロボロになって倒れているヴォルフが、小さな頃の自分と重なって見えて、小鳥は恐怖した。
(でもルカくんは、お父さんとは違う。八つ当たりみたいに、理由もなく誰かを殴るなんてこと、しない……!)
ヴォルフにだって、結局のところ小鳥を噛んだから怒っただけだ。
怒りの表現が過激ではあったが。
「……小鳥、おはよう」
不意にルカが挨拶をしてきた。
「おはよう、ルカくん」
挨拶を返しながらルカと目を合わせる。
しかし、ルカは小鳥と目が合うと、気まずげにふいと視線をそらしてしまった。
(ルカくん……?)
いつもならルカが積極的に話し掛けてくるのだが、今日は「じゃあね」と言って逃げるように小鳥から離れていく。
とても素っ気ない。
(え……私、避けられた……?)
今度はルカの態度に呆然とする小鳥だった。