EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【ルカ編】
俳優の兄、蒼神レンリの他にもう一人、軍学校に兄がいると言っていたのをルカと小鳥は思い出す。
弟に呼ばれて立ち上がった彼は、口元を大きなマスクで隠していた。
「ん……なに?拷問の時間?俺、必要?」
ボンヤリした目で誰にともなく尋ねるレイチ。
顔の半分はマスクで見えないが、なぜだか目元からミステリアスなイケメンオーラが溢れ出している。
マスク着用でも十分女子から騒がれそうだ。
「拷問の時間ではないですが、レイチ兄さんは必要です」
「ん……そう。ノコギリはいる?」
「ノコギリではなく紙コップを持て。そして紅茶を注ぐんだ」
「ん…………だる」
「飲み物は貴様が担当だろう。しっかり働け」
みんなで頑張らなければチームワークの意味がない。
氷河に尻を叩かれ、渋々レイチは紙コップを手に持った。
と、その時。
「氷河さまー!ただいま戻りました!あ、小鳥ちゃん!」
「月那ちゃん!?」
どこかへ行っていたのか、タタタと元気良く屋台へと走り寄って来る月那。
彼女はラッピングされたお菓子が入ったカゴを持っている。
どうやら広場を歩き回りながら、お菓子を売っていたらしい。
「いらっしゃいませ小鳥ちゃん。もう何か食べてみた?氷河さまの手作りだから、どれもすっごく美味しいよ!」
「蒸しパン買ったの。食べるのはこれからで」
ニコニコしながら話し出す二人。
そんな女子の会話に氷河が割り込んだ。