EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【ルカ編】
「おい、月那。野薔薇はどうした?」
ギクリ。
月那が笑顔を引きつらせる。
「えっと、野薔薇ちゃんは、ですね……。お、怒らないでくださいね……?」
取り敢えず念を押してから、月那は白状した。
「“カロンさまのライブが始まるので抜けますわ!”……って言って、ルンルンしながら行っちゃいました」
聞いた瞬間、ビキッと、氷河の額に青筋が走る。
「あいつめ!何のためにわざわざ店をやってると思ってるんだ、協調性の欠片もない!月那!野薔薇を甘やかすな。今度は鎖で縛って動きを封じろ。俺が許可する」
「うぅ……許可が出ちゃったよぉ……ごめんね野薔薇ちゃん」
今度は見逃せない。
月那がここにはいない野薔薇に独り言で謝っていると、氷河が突然話題を変えた。
「ところで月那、一人で大丈夫だったか?頭の緩い男共に話し掛けられたりしなかっただろうな?」
「頭が緩いかはわかりませんが、何人かの男の人に声は掛けられましたよ。一緒に遊ばないかって」
「ほう……」
氷河が静かな怒りを孕んだ低い声を出す。
彼は腰に下げていた日本刀に手を掛け、チャキリと鳴らした。