☆ゲット・ビッガー☆



「今日の日直、だれだぁ~。

黒板、きれいにしとけよー。」




昼休みのチャイム音と同時に、澤田先生が呼びかけた。




(私だ...)




今日の日直は、私と小田桐君だった。

だが、朝の出来事でギクシャクな私は、彼に話しかけることができず、一人で日直の仕事を片付けてしまった。


そんな私は、今、『人生最大のピンチ』と思われる状況にいる。




(と、届かない...)




黒板の端のチョークの文字が消せない。


「って、そんなのイス持ってきて消せばいいじゃん!」と、思うだろうが、私の状況の場合それができるのだろうか?



昼休み、当たり前のようにガラッとした教室に、二人きりになった日直コンビ。

その日直女子が、必死に黒板の隅の文字を消そうとしているが、残念ながら、もう少しのキョリで届かない。

そんな必死になっている日直女子を、机で頬杖をつきながら、ただただジッと見つめる日直男子。

ごくごく普通の事だが、あいにく、その日直男子は今朝、日直女子にキスをした。(耳だが...)




(こんな空気の中、何もないかのように椅子を引いて登れとぉ~?!)




そんなことでもしたら、小田桐君にまた、今朝の事を意識していると面白がられるだろう。




(てか、手伝ってくんないの?

「俺がやってやるよ。」的なの、ないわけ?!)




若干ムカムカしながら、私はチラッと小田桐君を見た。

私の視線に気づいた小田桐君は、いつもの爽やか~な笑顔でニコッと笑いかける。




(なんじゃあ~、その笑顔は!

「もう少し、ガンバレよ!」なのか?

「せいぜい、ガンバルがいい。」なのか??


...てか、どっちにしろ、間違っている!!)




我慢の限界に達した私は、バッと振り返った。




「あのっ、小田桐君!!」








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