☆ゲット・ビッガー☆
重なった手を引き抜こうとする私の横目に、冬真君の顔が映る。
さらに冬真君は、私の手をギュッと握ったまま、離さない。
「なに?
誰かに見られるのが、怖いのか?」
「い、いや...」
「...んなら、」
すると、私の手を離した冬真君は、私の体をクルッと自分の方に向けさせ、窓のふちに両手をつく。
胸の前で両手に黒板消しを持ったままの私は、冬真君と窓に挟み撃ちをされて、身動きが取れない状態になっていた。
「いっそ、キスでもしちまうか?」
「き、キス?!///
こんなところで?! だ、ダメ!!///」
「フッ。こんなところで、ね。
んじゃ、ここじゃなけりゃイイってわけだな。」
「ち、ちがう!そういう意味じゃない!!
き、キスはダメ! なし!!
キスなし!!!/// 」
徐々に顔を近づけようとする冬真君を、両手の黒板消しを盾にして、私は自分のファーストキスを必死に守り抜こうとする。
「...黒板消しにキスは、さすがの俺もできねぇ。」
そういった冬真君は、しぶしぶ私を解放してくれた。
(よ、よかった~...)
「ふう~」と一息ついた私に、獲物を狙う猛獣のような目を向ける冬真君。
「今回は、見逃す。
今度は、ぜってぇ逃がさねーから。」
「ひぃっ!こ、コワ...
防御力UPしとかないとな...
ありがとう、黒板消しちゃん!」
そう、自分の手の中の黒板消しに感謝をする私を見て、冬真君がクスクスと笑いだす。
「お前、黒板消しとしゃべってんの?
お前って、変人だな。」
「い、いいんですっ!
この子のおかげで助かったんだから!!」
(あなたみたいな変人から、守ってくれたんだもんっ!!)
これ以上ハプニングが起きぬよう、最後のセリフだけは心の中に留め、私はさっさと日直の仕事を片付けた。