彼に惚れてはいけません
こんなのも映画と違う。
ベッドで愛し合った後は、しっとりと愛を語り合うものだと思っていた。
こんな風に、バカなことで笑い合えるなんてね。
「ひゃー!よしのさーん!って叫んでたくせいに」
「言わないでぇぇぇ」
あまりの吉野さんのテクニックに私は、出したこともない声を出してしまったようだ。
「由衣も俺も、動物なんだなって思った。お互いに本能のままでさ。理性なんか吹っ飛んでた」
動物か。
本当にそう。
私は、本能のままに吉野さんを求めた。
「いまさらこんなこと言っても言い訳みたいだけど、手を出すつもりはなかった。今日は、本当に俺を知ってもらうために家に呼んだ」
急に真剣な声でそう話し出す吉野さんの横顔を見つめる。
チラっと目が合った後、にらまれた。
「由衣のせいだからな。お前が止めないから」
「止めたもん」
「止めてねぇよ。お前は、俺を止めるどころか・・・・・・全身で俺を愛してくれた」
わざとらしい咳払いをひとつして、吉野さんは私の手を握り直す。