彼に惚れてはいけません
「未来のことなんて信じなくてもいい。ただ、今だけは信じてね。吉野さんのこと世界中の誰よりも愛してる」
愛してるって言葉は映画の中だけのものだと思っていた。
自分の口からそんな言葉が出る日が来るなんて、信じられない気持ちでいっぱいだった。
「愛してるって言葉、今までは薄っぺらいと思ってたけど、素直に嬉しい」
鼻をすすった吉野さんは、涙を私の首筋につけ、そのまま首にキスをした。
「愛してるなんて、俺は言わないけどな」
「好きって言ってくれたからいい」
「好きなんて言った?」
裸で抱き合うことで、体も心もとけてしまうくらいに、心地良かった。
この肌に会う為に生まれてきた、とさえ感じる。
私が長年探していた自分の片割れに出会えたような、安心感。
ここだよ。
あなたの居場所はここだよって。
叫びそうになる。
吉野さんは、私の隣にいて。
ずっとずっと私が守ってあげるから。