彼に惚れてはいけません

でも、綺麗過ぎるベッドルームを見ていると、ふと不安になる。

先週観た映画だったかな。

好き同士なのに絶対に付き合おうとしない男性がいた。

思わせぶりで気のある素振りはするのに、ちゃんと向き合おうとしない。

その男の人の部屋も、物が何もなかった。

その理由はとても悲しいものだった。


彼は、寿命を宣告されていて、彼女を寂しい思いにさせたくなくて、一線を引いていた。

いつ消えてしまっても誰も困らないように、死の準備をしていた。

でも、彼は死の前に、愛する女性に出会い、自分が止められなくなった。
彼女は余命が1年だと知りながら彼と結婚して、彼が亡くなってから彼との子供を出産した。


「由衣、どしたの?」

思い出すだけで涙が溢れる映画だった。

「ううん。大丈夫」

自己中心的で勝手な男性だと思っていたのに、誰よりも回りの人のことを考える人だった。

その時、ふと浮かんだんだよね、吉野さんのことが。



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