彼に惚れてはいけません
「中学からバレー部だったって話した?」
「聞いてない」
「腰を痛めてセッターになった話は?」
「聞いてない」
「マネージャーと付き合ってた話は?」
「全く聞いてない」
そこまでいくとわざとだとわかり、私は吉野さんのお腹をプニっとつまんだ。
筋肉質でつまむお肉はあまりない。
「バレー部に親友がいた。中学からずっとバレー部を引っ張ってきたそいつと一緒に高校でもバレー部に入り、弱かった部を県大会に出られるくらいに強くした。ふたりで部を引っ張って、そいつが部長で俺が副部長だった」
バレーのイメージはなかったけど、確かに吉野さんはバレー部が似合う。
小さい頃見たテレビの中のバレーボール選手の顔はみんなシュッとしていた。
「マネージャーの子が、俺を好きになって、部内が荒れたことがあった。みんなのマネージャーだったから、誰かと付き合うとかそういうのは絶対に許されない雰囲気だったんだ」
私は、高校時代のサッカーのマネージャーのことを思い出していた。
みんなのマドンナだった彼女がエースと付き合って、サッカー部を追放された、という事件があった。