彼に惚れてはいけません
「俺もその子が好きだった。でも、高校のバレー部を引退するまでは絶対に気持ちを伝えなかったし、付き合うこともなかった。それが、まぁ、奥さんになった人なんだけど」
「素敵な人だったんだろうな。みんながうらやむ美男美女」
頭の中には、もうアメリカンハイスクールの映画の風景が浮かんでいた。
「また、映画みたいな想像してるだろ。そんなことない。普通のふたりだった。卒業するまでは隠れて付き合っていたんだけど、部長だった友達がいつも協力してくれてたんだよ。軽い男で、他校に彼女がいたりしたから、よく恋愛のアドバイスもしてくれた」
その時、ピンとひらめいた。
これは映画の観すぎのおかげだと思う。
その先が読めてしまった。
「後から知ったことだけど、その頃から・・・・・・親友と影で浮気していたんだよな。本当に信じられなかったし、ドラマみたいだなって笑ってしまうくらい。でも、そんなに長い間ふたりが付き合っていたってことは、本当は俺が相手じゃないほうが良かったのかなって思うし、逆にごめんねって気持ちになった。俺さえいなければふたりは堂々と付き合えたんだろうし」
吉野さんは悪くないし、100%被害者なのに、ごめんね、なんて。