彼に惚れてはいけません

「赤い猫も外さないとだめだな」

「ジバニャン?」

「ああ、由衣が気になるものは出来るだけ消していかないと」

ここで、大丈夫だよ!って言うのが大人のイイ女なのかもしれない。

でも、素直になることを教えてもらった私はもうそんなかっこつけたことは言えない。

私は、吉野さんのあごひげに触れ、

「弥生さんが一番心配」
と言った。

「そうだろう。でも、俺は彼女と体の関係はない」

「え?心は繋がってるの?」

「それもない。と俺は思ってるが、向こうはわからない」


優しい吉野さんのことだから、親身になって相談に乗っていただろうし、息子さんのこともかわいがっていただろう。

私さえ現れなければ、吉野さんと弥生さんは・・・・・・


「バカなこと考えるな!お前がいてもいなくても、俺は弥生と付き合うつもりはない」

「本当に?」


私以上に私を理解してくれている吉野さん。

その言葉を信じよう。

誠実に愛を示そうとしてくれているのがわかる。


この腕を、この声を、この瞳を・・・・・・信じよう。


信じるって言葉は、裏切られても許します、という意味も含まれていると吉野さんは言う。

裏切られても許すから、信じさせて。




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