彼に惚れてはいけません

弥生の逆襲

―弥生の逆襲―

ダダダダーン

ダダダダーン

ベートーベンの運命のイントロが流れるようだった。


吉野さんの会社のビルの1階のエレベーターから出てきたのは、弥生さんだった。

現在、顔を合わせたくないNo,1人物。

「あ、おはようございます」

「おはようございます!うちの会社に御用でしょうか」

今日の弥生さんは、髪を結い、清楚な雰囲気だった。


ライバルのご対面。
弥生さんは、私をライバルだとは思っていないかもしれない。


「今日は、下の階の社長さんにお仕事のお話で」

しどろもどろに答える私をじっと真っ直ぐに見つめている。

「岡田社長とのお話、うまく行ったんですってね。吉野の方から聞きました」

早速、吉野というワードが出てくるあたり、彼女も私をライバルだと認めているようだ。

「そうなんです。いいご縁で、ありがたく思ってます」

「呼びましょうか?」

余裕の笑みを浮かべる弥生さん。

「誰を、ですか?」

「吉野さん、今なら時間あると思いますけど」

「あ、いえいえ。大丈夫です。もう約束の時間なので、行きますね」

上がってしまったエレベーターを呼び戻す為に、もう一度ボタンを押す。


すると、次に出てきたのは・・・・・・

吉野和也。


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