彼に惚れてはいけません
「俺は誰も信じられなかったし、もちろん弥生のこともそういう風には見ていない。弥生には他に男がいるんだろうってこともわかってたけど、俺は問い詰める立場でもないし、うまくいけば俺はいらなくなるんだろうなと思ってて。だから、今回俺に大切な人ができたと言ったとき、納得してくれると思ってた」
静かに話す吉野さんは、時々視線を弥生さんに向けた。
「知ってたの?」
「入社した頃話していたダメ彼氏だろ?彼にないものを俺に求めていたんじゃない?だから、俺は太郎をかわいがろうと思った」
客観的に聞いていると、吉野さんが弥生さんのことを好きで、二番目の男でいいからと息子さんを大事にしていたようにも聞こえてしまう。
「由衣、俺と弥生の関係、お前にはどう見える?」
「友達以上恋人未満、みたいな感じでしょうか・・・・・・でもそこには恋愛感情も多少関わってるような」
瞳に涙をためている弥生さんを見ていると、吉野さんへの愛が感じられる。
「弥生さんは吉野さんのこと好きだったと思う。でも、踏み込めなくて、前の彼のことも別れることができなかったとか・・・」
「由衣、弥生の気持ちがわかるのか?確かに俺はつかみどころがないからな。実際、弥生が付き合ってくれと言ってきたら逃げただろうし」