彼に惚れてはいけません

“凱旋門 セーヌ川 エッフェル塔”と書いたところで吉野さんが笑う。


「お前、本当にパリを愛してんの?こんなの世界中誰でも思いつく場所だぞ」

「だって、だって、行きたいんだもん」

「行くに決まってるだろ~?もっと、由衣しか知らないような場所ないの?」


“ムーランルージュ”と書いた。

いつかカフェでかかっていたサントラ。

“マルセイユの石鹸やさん 裏通りのマカロン屋さん ベルサイユ宮殿”


「裏通りのマカロンってお前・・・・・・どこの裏通りだよ~」

大笑いする吉野さん。


「私の好きな映画に出てくるの。おばあさんが夫婦で経営している小さなマカロン屋さん」

「まぁ、いいや。探そう。由衣があるっていうなら、絶対あるだろ」

「モンマルトルの石畳を歩きたい~!吉野さんとパリに行けるなんて夢みたい!!」



私の頭の中には、映画の世界が広がっていた。

私の原点であり、今の私を作ったのが映画であると断言できる。

パリに行ける。
大好きな人と。

憧れの街を歩きたい。

ベタだけど、シャンゼリゼ通りを吉野さんとスキップしたい。



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