彼に惚れてはいけません
「大丈夫?さっきから気持ち悪いんだけど」
私はニヤニヤして、声を出して笑っていたようだ。
「ムフムフ言ってたぞ。そんなに喜んでもらえて嬉しいけど、まだ先だからそれまで大丈夫?妄想ばかりして、仕事でミスするなよ」
「大丈夫大丈夫!」
と両手を動かして、前にあったフォークを飛ばしてしまった。
「ほらぁ、興奮しすぎ!道でこけたり、車にぶつからないか、心配」
吉野さんは、時にお父さんのような眼差しになる。
その安心感が大好きだったりする。
「今夜、うち来る?」
フォークで汚れたテーブルを拭いてくれた吉野さんが視線を合わさずにそう言った。
あの素敵な夜から、何度もデートをしているけど、エッチはしていなかった。
「え、家?え?」
動揺を隠せない私に、吉野さんはニヤリと笑う。
「お前、興奮しすぎだから。何、想像してるんだよ」
指先を絡めてくる。