彼に惚れてはいけません
「テラス席、取れて良かったな」
「うんうん!ここに座るのが夢だったの。ここから見る、夜のエッフェル塔!!すごく綺麗なんだって!」
季節によって違う顔を見せる夜のエッフェル塔は、今夜は紫色をしていた。
「どうしよう。泣きそう」
「おら、泣け泣け」
この旅で何度も泣いた。
吉野さんの言葉にも泣いたし、映画の中に入り込んだようで、感激しちゃう。
この感無量な気持ち、一生忘れない。
「明日の朝、モンマルトルの丘にのぼって、それで終わりなんだね」
「いや、由衣が行きたかった場所、まだ残ってるだろ」
考え込む私。
有名な場所は全部行ったはず。
「裏通りのマカロン、だよっ!」
爽やかで、優しい笑顔。
心地良い川の音と、風。
「吉野さん、大好き~!」