彼に惚れてはいけません

「テラス席、取れて良かったな」

「うんうん!ここに座るのが夢だったの。ここから見る、夜のエッフェル塔!!すごく綺麗なんだって!」


季節によって違う顔を見せる夜のエッフェル塔は、今夜は紫色をしていた。

「どうしよう。泣きそう」

「おら、泣け泣け」

この旅で何度も泣いた。


吉野さんの言葉にも泣いたし、映画の中に入り込んだようで、感激しちゃう。

この感無量な気持ち、一生忘れない。


「明日の朝、モンマルトルの丘にのぼって、それで終わりなんだね」

「いや、由衣が行きたかった場所、まだ残ってるだろ」


考え込む私。

有名な場所は全部行ったはず。


「裏通りのマカロン、だよっ!」

爽やかで、優しい笑顔。

心地良い川の音と、風。


「吉野さん、大好き~!」



< 153 / 180 >

この作品をシェア

pagetop