彼に惚れてはいけません
「我慢できないの」
「何?さすがに船の上ではできないよ」
と冗談を言う吉野さんの手をそっと握った。
「愛してるの、心の底から」
愛してるという言葉は、口先で言うものじゃない。
心からにじみ出て、あふれ出すものなんだ。
「じゃあ、ずっと一緒にいようか」
私を見つめる吉野さんの表情が、変わる。
真剣な顔になる。
「由衣と出会う為に、今までの試練があったんだと思う。神様はこんなサプライズを用意してくれてたんだな。もう、由衣がいれば他に何もいらないや、俺」
誰にも気付かれない秘密のキスをした。
だって、今一番綺麗な大聖堂の横を通過してるんだもんね。
「一生、俺の隣にいて。泣いたり笑ったり怒ったり、そのままの由衣でいいから、ずっと俺の隣にいて」
鼻先をくっつける。
「吉野さんも、そのままでいい。よだれたらしてもいいし、居眠りしてもいいから」
プニっと頬をつままれた。
「んじゃ、結婚しますか」