彼に惚れてはいけません
ここはパリなんだ。
大好きな街。
これは映画の中じゃないんだね。
「あのさ、俺の心の中は由衣が満たしてくれたけど、俺の部屋はまだまだ足りないものがある。これから、由衣が俺の部屋にいろいろ持ってきて、ぐちゃぐちゃにしてくれる?」
「いいの?」
「ああ、もう不安じゃないから」
ホテルの前についたのに、もう一周ホテルの周りを歩いた。
「でさ、結婚式だけど、どうしたい?」
「ふたりきりで小さな教会で結婚式したいな」
「でも、ご両親は花嫁姿が見たいと思うよ」
「じゃあ、家族だけ呼んで、どこかで結婚式したいな」
「そうだな。できればパリがいいけど、ちょっとそれは難しいな」
いろんなことをしっかりと考えてくれていた。
「お披露目会っぽいのを、箱庭カフェでやるってのはどう?」
と私が提案すると、吉野さんは目をキラキラさせて、俺もそう思ってた、と言った。
ホテルに戻った私達は、シャワーを浴びる前にベッドへ転がるようにキスをした。
さっき少し飲んだワインのせいかな。
情熱的な吉野さんのキスに、私はもう幸せの絶頂にいた。
「結婚したいな、早く」
吉野さんの口からそんな台詞が聞けるなんて、思ってなかった。
嬉し涙を我慢しながら、吉野さんをぎゅっと抱きしめた。