彼に惚れてはいけません
“運命だな、俺達”と言った彼の声が、頭から離れなかった。
絶対に惚れちゃだめな人。
ここで忘れなきゃ、私の人生狂わされる。
ムーランルージュのサントラが終わり、私は目を閉じた。
人生は一度きり。
後悔するのもまた人生。
そんな言葉が、聞こえてきた。
目を開けると、凱旋門の壁の装飾が目に入る。
憧れのパリ。
まだ一度も行ったことのない憧れのパリ。
この店で会ったのも何かの縁。
誘われた店の名前が、セーヌだったことも何かの縁。
運命、なんて信じてないし、彼が運命の相手だったら困る。
でも、でも・・・・・・
この胸のときめきを無視することはできない。
会いたいと思うこの気持ちは、消せない。