彼に惚れてはいけません

入社してすぐに、会社の取引先の人に声をかけられ、何度かデートするうちに付き合うようになった。

好きだ好きだと会うたびに言う彼に、気持ち悪さを感じた。

私は映画のような恋に憧れていたんだと思う。
半年もせずに別れて、その後も数ヶ月しつこく追ってくるその彼を見て、自分はああいう人間にはなりたくないと思った。

今、思うこと。

私が吉野和也さんに対して抱いてしまっているこの想いは、私の生涯で、一番大きな“好き”かもしれない。

でも、全然映画みたいな恋じゃない。

確かに顔は素敵だけど、よだれ垂らすし!!
嘘つくし!おじさんだし!!

でも、今私にとびっきりの幸せを与えてくれているって事実がある。

私に人生が変わったと言ってもいい。

あの朝、窓から見えた彼の後姿。

あの瞬間から、私の心の奥にある、何かが小さく燃え出したんだ。


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