彼に惚れてはいけません

女性が手に持っていた木目のお皿の上には、アボカドとエビのシーザーサラダだった。

真ん中の半熟卵が、私に“早く食べて~”と言っている。

今にも崩れちゃいそうな柔らかそうな半熟卵。

吉野和也さんは、私の何を知っているんだろう。

最近アボカドにハマっていること、半熟卵が好きすぎて、半熟卵を作るキッチングッズを買ったこと、知ってるんだろうか。


「仕事で少しだけ遅れるからって伝えて欲しいって。吉野さんが女の子連れてくるなんて、初めてなのよ」

女性は、私の頬が赤くなるのを確認するかのように私の顔をじっと見て、ニヤっと笑った。

私の気持ち、バレた?

わざわざ電話をしてくれていたこと、私を気遣ってサラダまで頼んでくれていたことが本当に嬉しくて、まだ来ていないのに私のハートは鷲掴みされてしまった。




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