彼に惚れてはいけません
ヨーロッパ好きの私のハートを鷲掴みにする彫りの深い顔立ち。
色白で、たれ目。
高い鼻にぽってりした唇。
グレーのスーツのジャケットを脱ぎ、鞄に引っ掛ける。
「エスプレッソ、できるだけ濃くして」
と、見た目とのギャップのあるお茶目な注文と、意外と高い声。
ぷぷ。
かわいい人。
と笑った瞬間に、席を探す彼と目が合った。
すぐにそらされ、私は何でもないことなんだけど、ショックを受けていた。
変な女だと思われた?
ひとりで笑ってる変な女って思ったに違いない。
先のとがった黒光りした靴が近付く。
カツカツカツと音が響く。
そして、私の斜め横の席に鞄を置き、その向かいに座った。ということは、少し離れてはいるけど、隣の席ってことだ。