彼に惚れてはいけません
「それ、すごくわかります。私も自分のいやなところがたくさんあって、それと向き合うのが怖くて、逃げてる。人って誰でもそうかもしれないですけど、自分の欠点を隠そうとする」
「そうだよね。でも、欠点ごと受け入れられたら、もっと楽になれる」
私は、自分がインドアであることや、あまり社交的ではないところが欠点だと思っていた。
人に合わせるこの性格も好きじゃないし、人に合わせて疲れる自分に呆れたりもした。
それを話すと、吉野さんは笑った。
「それ、俺から見たら全部君の長所だよ。俺は、自分がこうしたい、と思ったら他の意見を聞けない性格だった。それもあって仕事上ではぶつかることも多くて。妥協するっていうんじゃなく、他人の意見を一度飲み込んでみるっていう風に気持ちを変えたら、楽になった」
「一度飲み込んでみる、ですか!それ、明日から実践してみます」
私は、今日あった営業での嫌な出来事や、上司からのため息のことを話した。
とても話しやすくて、こんなにも男性に自分のことを話すのは初めてかもしれないと思った。
「ストレスのない人っていないんだよ。だから、そのストレスとどう付き合うかってこと。ストレスに負けて、ストレスだらけの心になるか、ストレスに打ち勝って強い自分になるか、それだと思う。今日の昼、由衣の話を聞いていて、助けたいって思った。正直、それはちょっとかっこいい言い方かもしれないけど、力になれたらって思ったんだ。ってそういうとイイ男っぽくない?」
真剣な表情になったかと思えば、ふざけて笑いだしたり、コロコロ変わる。