彼に惚れてはいけません

「絶対にないです!吉野さんこそ、フランスの何を知ってるんですか!!失礼です」

そう、これも私の欠点。
好きなもののこととなると周りが見えなくなる。

「おっと、ごめん。怒らせてしまったね。信じることは素晴らしいことだと思う。でも、実際に見て触ったものしか俺は信じないタイプなんだよ」

そう言うと、ゆっくりと右手を伸ばし、私の頬に手を当てた。

もう、表現し切れないくらいのドキドキだった。

柔らかい感触。
あったかい。

「ほら、こうして触らないとわからない」

だめだよぉ、そんな切ない顔しちゃ。

絶妙な垂れ目でそんな顔されちゃうと、もう好きが溢れちゃうよ。



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