彼に惚れてはいけません

顔は見えないけど、気配の感じる距離。

ドキドキしていると、彼は、フワァ~っと声を出して、あくびをした。

気配を感じとろうと全神経を集中させていると、彼はエスプレッソを一口飲むと、テーブルに顔をつけて、眠り出した。

といっても、私は前を向いたままだから、何となく視界の端に入る程度の情報だ。


スースーと寝息が聞こえ出したので、私はチラリと彼を見た。

眠ってる!!!!

しかも、
顔をこっちに向けて眠ってる。

半開きの口、まじありえない顔して寝てる。



よだれーーー!!



はい、終了。



私の淡い恋心は、アイスオーレの氷と共に溶けて消えていった。


8時半になり、私はそろそろ出社の準備を始める。

軽く化粧直しをして、今日のスケジュールを確認。
手帳に挟んでいる薄い鏡に彼をうつしてみる。

うん、やはり、よだれだ。



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