彼に惚れてはいけません
スタスタと駅と反対側に歩き出す吉野さん。
やっぱり、全部嘘だったのかな。
遊び人なだけだったんだ。
駅方向に一歩、二歩とゆっくり歩き出す。
「っておい!!帰すわけねぇじゃん」
私は背中から吉野さんに抱きしめられていた。
「自分を大事にしろって言っただろう?今は、それができるか試しただけだ。自分の心にちゃんと聞いてみろよ」
「吉野さん・・・・・・」
「このまま別れて良かったのか?」
耳元に当たる吉野さんの唇、いきなり密着過ぎだよぉ。
「このままじゃ嫌って思いました」
「じゃあ、追いかけて来いよ。第一ミッション失敗だからな」
「だって、だって・・・・・・吉野さんはそれでいいのかなって思って」
泣き出しそうな気持ちだった。
もう会えないのかなって思ったんだもん。
夜風が気持ち良くて目を閉じる。
「相手の気持ちばっかり考えるから疲れるんだよ。俺がどう思っててもいいんだよ。由衣がどうしたいのかってのを大事にしろ」
「はい」
私がどうしたいのか。
そんなの言えないよ。
今の自分の心、恥ずかしくて言えないよ。
だって・・・・・・