彼に惚れてはいけません
「それでは失礼します」
部屋を出て、社員さんの視線を浴びながら、会社のドアを開けて出て行く。
エレベーターのボタンを押して、待っていると吉野さんに背中を叩かれた。
「下まで送るよ」
「ありがとうございます」
透明ガラスの向こうから、弥生ちゃんの視線を感じながらエレベーターに乗った。
「由衣、ごめんね。こんな展開になるなんて。岡田社長、悪い人じゃないけど、女好きだからもし危ないなと思ったら、仕事なんてどうでもいいから逃げろよ」
「うん。でも、大丈夫です!サクっと提案して、すぐに帰るつもりですから」
エレベーターってどうしてこんなに早く下に着くんだろう。
もっと一緒にいたいのに。
「2時に約束してたのにそれもごめん」
「いいです!いいです!またいつでもお茶できるし」
またいつでも・・・・・・それが私の願いだった。
そういう関係になりたい。
「今日の食事会、心配だから終わったら、会いたい」
「え」
心配だから?
会いたい?
吉野さんの言葉に、ドキドキが止まらない。