彼に惚れてはいけません
恋を盛り上げるエッセンス
―恋を盛り上げるエッセンス―
映画でも、恋の序盤に何か大きな試練が訪れたりするものだ。
このセクハラ食事会は、恋を盛り上げる為のエッセンスであり、私と吉野さんの恋物語には必要なもの。
そう信じて、私は待ち合わせ場所へと向かう。
そこにはタクシーが停まっていて、中には岡田社長が座っていた。
私服に着替えた岡田社長は、プロゴルファーのような雰囲気。
がっちりした体に、襟を立てた長袖ポロシャツに、スラックス。
気になるのは、加齢臭を消す為のつけすぎた香水。
この匂いは、ブルガリだろう。
「何が食べたい?肉でも魚でも、何でもいいよ」
「いえいえ。本当に提案させて頂けるだけでありがたいので、軽い食事でいいです」
グッチのセカンドバッグに、フェラガモの靴、時計はロレックス。
統一感のない金持ちファッションに、嫌悪感を感じながらも愛想笑いを続ける。
「そう言わずに、食べたいもの言って」
「じゃあ、肉で」
吉野さんがお肉が好きだとさっき聞いたから、肉と言ってしまった。