彼に惚れてはいけません

「ごめんごめん」

と岡田社長は、私の太ももから手を離した。

「もう~!そういうのがセクハラって言うんですよ~」

と空気を悪くしないように笑顔で言った。


「はは、そうかそうか」

と言いながらも、肩を寄せてきて、岡田社長は全然懲りていないようだった。

これは、お酒を飲むとどうなるんだろうか。


タクシーが停まり、和風な建物の前で降りた。

大きなのれんをくぐると、ステーキの匂いがして、吉野さんを思い出す。

肉、好きなんだぁ。
私も肉、好きだよ。

「じゃあ、どうぞ」

腰に手を回された。

それは拒否ることができず、そのまま店の中へ入って行った。


こんなこと、初めてじゃないもん。

契約するから一晩一緒に過ごそうって言う人だっていた。


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