彼に惚れてはいけません


頭をポンポンってされて、頬をぷにぷにってされて、完全に小さな女の子をかわいがるパパのような眼差しなんですけど・・・・・・

「由衣がして欲しいって言うから、してあげる」

その後に待っていたキスは、自分が映画のヒロインになったんじゃないか、と錯覚してしまうようなムーディーでねっとりしたキスだった。

「もうっ」

「なんだよ」

「もう~!バカバカ」

私は、駄々っ子のように吉野さんの胸を叩く。

「なんだよぉ!」

「好きになっちゃうよぉ」

「それはダメだな。俺、逃げちゃうよ」

言いたいことを素直に言える関係が心地良くて、お父さんにも似た包容力。


「もう俺に夢中なんだろ。俺にはわかる」

「ふん。大人ぶってて悔しい」

私の体はこんなにも火照っているのに、吉野さんは涼しげな顔をしていた。

「だって、俺大人だもん」

「責任取ってよ!私、もう吉野さんなしの人生なんて考えられない」

まさかね。
こんなセリフを言うなんてねぇ。

「じゃあ、俺のこと嫌いにさせてあげる」

そんなの無理だよって言おうとした唇を塞がれる。

今度はさっきまでのロマンチックなキスじゃなく、欲望のままに激しいキス・・・・・・

絡め合う舌、漏れる吐息。

動物なんだなって思うような求め合うキスだった。

それは、嫌いになるどころか・・・・・・



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