彼に惚れてはいけません

「で、昨日のレンタルの契約の会社、次に俺も一緒についてくわ。女だけだとなめられるし、他にも提案してみたいし」

自分の営業成績が悪いと、こうして乗っかってくる中村さん。

「私ひとりで大丈夫です。提案書も私が作るから」

「冷たいなぁ。せっかく助けてやろうと思ったのに、かわいくねぇな」

そんな意味のないやりとりをしている間に、FAXが届いていた。

岡田社長の会社から、担当者の名刺と連絡先、細かい質問などが書かれていた。

社長室に置けるような家庭用の小さいもの、アレルギー体質である常務のお孫さんの家に置くアレルギー対策のものの提案をして欲しいとのことで、私は俄然やる気がUP。

全部吉野さんのおかげだ。

辛い思いもしたけれど、こんなチャンスをくれたのは吉野さん。

それに、岡田社長のおかげで、吉野さんとの愛が深まったんだもん。

私はパソコンの前で、深呼吸して、提案書の作成に取り掛かる。

吉野さんとは連絡先を交換したけど、まだ連絡を取り合ったこともない。

IT企業に勤めているくせに、スマホはあまり好きじゃないらしく、SNSとか大嫌いなんだって。それなのに、あんなかわいい赤い猫のカバーつけてさ。

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