彼に惚れてはいけません
「佐々木さん、2番にお電話です」
今日は、みんな外出していて、オフィスは静かだった為、後輩の声が響く。
「はい、もしもし佐々木です」
『佐々木さん、俺誰かわかります?』
電話の向こうの声は、吉野さんの声で間違いない。
普段よりも少し低く感じる声に、ドキドキしながら返事をする。
「ご用件は?」
オフィスに声が響いているから、普通の対応をしてしまうが、心の中はすでにお花畑状態。
『冷たいなぁ。今、君の会社の近くにいるんだけど、お茶でもどうかなって思ったんだけど』
「かしこまりました。30分後でよろしければ、ご一緒致します」
吉野さんとお茶の約束ができたことで、私の仕事の効率も上がり、さくさくと提案書を作る。
でも、会社に電話してくるなんて勇気あるなぁ。
せっかく携帯番号教えたのに、なんて思いながらスマホに視線をうつすと
【着信あり 吉野和也】
電話くれてたんだ。
自分のスマホの画面に、吉野さんの名前が出ていることに感動して、しばらくニンマリしながら眺めていた。
はっと我に返り、パソコンに目をやるとスクリーンセーバーのパリの写真に切り替わっていた。
慌てて資料を作り、外出の準備をした。
緊張と嬉しさの余り、手が若干震えている。
早く会いたい。
今日はどんな吉野さんだろう。
優しい吉野さん?
冷たい吉野さん?
お父さんのようなあったかい吉野さんだったらいいな。
でも、ドSな説教系の吉野さんも好き。
何色のネクタイだろう。
靴は、茶色かなぁ。
私、ほとんどこれって、ファンだよね・・・・・・