彼に惚れてはいけません

「ファンってことは好きってことじゃないの?」

「それはどうかわからないけど、俺の誕生日にプレゼントをくれたり、父の日に息子からプレゼントを渡させようとしたり、俺の靴を磨いてくれたりする」

この人は、鈍感なのか。

それとも、すっとぼけているだけで、全部わかっているのか、どっち!?

「それって、完全に惚れられてると思うけど」

と私が冷たく言うと、

「そうなのかな?別にそういう感じはしないけど、まぁどっちでもいいや」

「良くない!良くない!!そんな積極的な人に勝てる気がしない!!」

とここまで堂々と男の人に自分の想いをぶつけられるってすごいな、と自己分析をしていた。

やはり、吉野さんは私にとってかけがえのない人。

「積極性なら、勝てるよ。由衣。だって、キスして欲しいって言ったんだぞ、お前」

私は、赤面するしかなくて、足をバタつかせながら、顔を隠した。

「勝つとか負けるとか、そんなこと考えるなよ。弥生は、離婚とかいろいろあって誰かにそばにいて欲しかったんだろう。それがたまたま俺だっただけ」

本当にわかってない!!

辛いときにそばにいて欲しい人っていうのが、女にとっては一番大事な人なんだよ!

たまたま、ってそんなんじゃないに決まってる。


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