彼に惚れてはいけません
「だんだん、自分の気持ちをうまく話せるようになってきたな。これで、またパリジェンヌに一歩近付けたな」
吉野さんは、私を笑顔にする魔法の言葉を知っている。
パリジェンヌに近付けた、なんてね。
「俺は、男も女も、信じない。嘘ばっかりで、その場をやりすごす為には人間ってどんな嘘でも思いつくんだよ。そういう人間の汚い部分が嫌い。むしろ、ジバニャンの方が好きだ」
いきなり核心をつく話題に。
意外だった。
誰にでも気さくに話しかけられる吉野さんの心にそんな想いがあったなんて。
吉野さんの過去を覗いてみたいと思った。
どんな辛い経験をしてきたんだろう。
人を信じられなくなる程の出来事があったの?
でも、そんなことを微塵も感じさせない柔らかい雰囲気と人を引き付ける魅力。
何より、吉野さんはいつでもどこでも自然体だ。