奇聞録三巡目
雨の日、教室で、狐を呼ぶ遊びをした事がある。
窓を少し開けて、十円だまに指先を乗せて。
雨の時にやってはいけないセオリーを無視して面白半分に。
結果は来なかった。
何度やっても来なかった。
つまらないので帰りにその十円使う意味でジュースを買った。
翌朝玄関チャイムをならす音で目が覚めた。
親が対応しているのが分かった。
親が私の部屋に来て、不思議そうに言う。
「あんたが昨日落とした十円だって届けてくれたよ。要らないって言ったのに、押し付けるように渡して居なくなっちゃった。」
寝起きで意味が分からなかったが、徐々に理解した。
朝、コンビニでこの十円を使った。
通学途中、前から帽子を被った紳士が歩いてくる。
「もしもし、あなたが落とした十円を拾いましたよ。」
その紳士は、私に十円を手渡す。
それ以来、あの遊びの十円は使っていない。