御曹司さまの言いなりなんてっ!
前回に顔を合わせた時は一瞬だけだったから、今回が皆とは初顔合わせのようなものだ。
ここの全員の顔や名前や部署は資料を読んで知っているけれど、部長はこの場で私をきちんと紹介してくれるつもりなんだろう。
「遠山、彼らがプロジェクトの責任者達だ。順番に名前と部署……」
「ああ、そういうの、いいから」
部長の言葉を遮るように、専務がヒラヒラと手を振って横から口を出す。
怪訝な表情の部長とは目も合わせずに、専務がしれっとした顔で言った。
「時間がもったいない。先に会議を進めて」
「ですが専務、彼女は今日初めて……」
「もうみんな知ってるから。彼女は新人社員の、遠山成実。部長の大のお気に入り。だね?」
「…………」
「はい、これで終了。会議を進めて進めてー」
クイクイと座席を左右に動かす専務を、私は茫然と突っ立ったままで見つめていた。
チームの皆がそれぞれ視線を見合わせ、『ほら始まった』と言わんばかりの気まずい顔をしている。
こ、この男は……。
どんな育ち方してきたのよ。 いくら自分が専務だからって、ついこの間まで学生だったくせに。
しかもさっきからクイクイクイクイ、座席を動かしてるんじゃないわよ子どもかお前は。
そんなに回転イスがお好きでしたら、私が全力でもって大回転して差し上げましょうか?
そして遠心力で宇宙の果てまで飛ばされてしまうがいい!