御曹司さまの言いなりなんてっ!

 こんなカジュアルな恰好の部長を見るのは初めてだったから、私の胸に風が吹くような新鮮な衝撃が走る。

 わ、部長、すごく素敵……。 じゃなくて!


「目が覚めたか。具合はどうだ?」

「おかげさまでもう大丈夫です。ところであの、お仕事の方は?」

「仕事?」

「役場に打ち合わせに行く予定でしたよね? 夏祭りの」

「ああ、あれなら明日に変更してもらった」

「え!?」


 私はサッと青ざめた。

 まさか私のせいで、部長の予定をキャンセルさせてしまった?


「も、もしかして私の体調不良のせいですか?」

「まあ、引っくり返った部下をそっちのけで、仕事に行くわけにいかないからな」

「そっちのけにして下さってよかったのに!」

「よくない。俺がいない間にお前になにかあったらどうする」


 真面目な顔をする部長の言葉に、私は一気に萎れてしまった。

 どうしよう。これは私の失態だ。

 部長にも、役場の担当者の方にもご迷惑をかけてしまった。

 フォローしなければならない私が、部長の足を引っ張ってしまったなんて。

「申し訳ありませんでした……」

 ショボンとしながら頭を下げて謝罪する私を、部長は明るく笑い飛ばす。


「気にするな。一日や二日予定がずれたくらいで、役場も夏祭りも消えて無くなりはしないさ」

「ですが…………」

「おいおい、せっかく回復したんだから元気出せ。また寝込まれるのはゴメンだぞ」
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